学部長メッセージ

人文社会学部長のメッセージ―新入生ガイダンスでのあいさつより―

人文社会学部長 源川真希           人文社会学部長 源川 真希

東京都立大学人文社会学部は、人間社会学科(7教室)、人文学科(8教室)の2つを入試単位としており、2年次からそれぞれの学科の教室に分かれます。皆さんのなかには、すでに自分が何を学びたいか決まっている人もいるでしょうし、まだ十分決まっていない方もいると思います。1年生のうちは全学共通科目(基礎科目、教養科目)で幅広く学び、自分のやりたいことを絞り込むこともできます。2年生からは講義だけでなく少人数の演習形式の授業に参加して、専門的な知識や技能を身につけます。

私はいまの世の中で、人文社会学部のそれぞれの学問分野がとても重要な意味を持っていると考えます。専門性ということはもちろんですが、本学部で扱う学問の方法は、どんな学問にも共通に必要な方法や技能を含んでおり、また刻々と変化するこの複雑な世界を読み解いていく有効な手段だと思われるからです。最も身近な例をあげればインターネットで無数の情報が飛び交うなかで、正確な事実とは何かを突き止める方法であり、従来の研究で言われていることを正確に理解して、それと自分が独自に分析し考えたことを区別する方法です。また人の意見を聞き、それに対する自分の考えを述べて、意見や価値観が異なる人を傷つけることなく、生産的な結論を見つける技法も含まれます。

人文社会学部に入学された皆さんは、幅広い教養と専門性、そしてどんな学問にも共通する技法を体得されると思いますが、私はひとつ皆さんにお願いしたいことがあります。いまから約100年前に東京市長を務めた後藤新平という人がいます。この人は関東大震災からの復興を指揮した人物です。彼は大都市の運営には技術家、学者、実際家が必要であるが、さらに「夢想家」が必要だと言いました。これは将来の理想的な都市の姿を、大胆に描くことのできる人のことです。実際、後藤自身が夢想家でしたから、復興事業はうまくいきました。

皆さんは人文社会学部で学び、広い意味で技術家、学者、実際家などの専門家となるわけですが、やはり私は、同時に後藤のいう「夢想家」になっていただきたいと願っています。これから始まるこのキャンパスでの学生生活のなかで視野を広げ、大いに仲間と語り、未来を思い描いて下さい。                     

(2023年4月6日)